2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

アベル・ボナール『友情論』(大塚幸男訳、中公文庫)

私たちが友情と呼ぶほとんどの関係は、ただ慣習や同盟にすぎない。社会で生きていくなかで当然生じる人との付き合い(交際)は、惰性と打算と功利に満ちた利己的関係であって、ボナールに言わせるなら「真の友情」ではない。それは人の代わりに人の地位や機…

ベークライトのクラリネット

私たちが普段いたるところで使っている合成樹脂(プラスチック)は主に石油を原料とするが、石油以外の原料からも製造可能である。それで最近はトウモロコシやサトウキビから作られたバイオプラスチックが話題になっている。 ただしプラスチックももともとは…

筆箱にグミ

前回の消しゴム話のつづき。 消しゴムのドイツ語が「Radiergummi(ラディアグミ)」であると知った時、なんとなく不穏な響きだと思ったのを覚えている。その感覚はおそらく、「放射能」を意味するドイツ語「Radioaktivität(ラディオアクティビテート)」の…

ステッドラーのマルス・プラスティック

トンボのMONO消しゴムを使い切ったので、新しいものをと探しに行ったら、たまたまその隣に並んでいた。外国製の字消しは使いにくいイメージがあったのだが、使ってみるとそんなことはなく、きれいに鉛筆の文字を拭い去ってくれる。 ステッドラー(Staedtler)…

ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』(平岡敦訳、創元推理文庫)

舞台は19世紀末のフランス。パリ近郊のグランディエ城に引きこもり研究に没頭していた高名な科学者スタンガルソン教授と、彼の娘でありただ一人の助手でもあるマティルドのもとで痛ましい事件が起こる。二人が研究所として利用していた離れの別館にて、マテ…

血液型占いの話

急に、小学生のころ、血液型による性格占いなるものがあることをはじめて知って、自分がB型(この情報は衣服の胸のところに安全ピンで留められた名札の後ろに記載されていた)ゆえに「マイペースで自己中心的」な性格であることを教えられたときのことを思…