筆箱にグミ

前回の消しゴム話のつづき。

 

消しゴムのドイツ語が「Radiergummi(ラディアグミ)」であると知った時、なんとなく不穏な響きだと思ったのを覚えている。その感覚はおそらく、「放射能」を意味するドイツ語「Radioaktivität(ラディオアクティビテート)」の接頭辞「ラディオ」に似た響きを持つ「ラディア」が、「グミ」という私たちが日常的に口にする可愛らしい菓子と結びついていることからくる、およそ直感的なものだっただろう。

 

当時の私がもう少し勤勉であれば、たとえば辞書を引くなりして、ドイツ語のRadierがラテン語の動詞radere、すなわち「ひっかく、かきおとす」に由来しており、化学者のキュリーによって発見され名付けられた放射現象とは語源的に全く無関係であることを確かめていたはずである──ゼラチン質のお菓子を指す「グミ」もまたドイツ由来のことばであり、かの国ではもともと単に「ゴム」を意味していたということも。

 

その労を取らなかったおかげというのもおかしいが、私の中では長らく、ドイツ人の筆記用具のなかに可愛らしい、しかしどこか危険でもある甘いグミが紛れ込んでいるというイメージが去らなかったのだ。