ベークライトのクラリネット

 私たちが普段いたるところで使っている合成樹脂(プラスチック)は主に石油を原料とするが、石油以外の原料からも製造可能である。それで最近はトウモロコシやサトウキビから作られたバイオプラスチックが話題になっている。

 ただしプラスチックももともとは植物由来の原料(セルロース)から合成されていたので、自然を排して純粋に人工的に生み出されるようになったのはベークライト、別名フェノール樹脂がそのはじめである。ベークライトはほんらい商標であり、1909年、ベルギー出身の化学者ベークランドによってそう名付けられた。

 記事のタイトルにある「ベークライトのクラリネット」は、ウンベルト・エーコの小説『フーコーの振り子』に登場する編集者ヤコポ・ベルボの回想で見つけたもの。数ある合成樹脂のなかでも歴史があるだけに、フィクション作品での採用率も比較的高い。ノスタルジックな趣があるが、もちろん今でも現役である。