『小説家を見つけたら』Finding Forrester(2000年)監督:ガス・ヴァン・サント

高い知能と恵まれた運動神経を有し、特に文学とバスケットボールの才能に秀でる16歳の少年ジャマール・ウォレスは、黒人の貧しい母子家庭の次男という境遇ゆえに兄と同じく才能を開花させることができないまま地域のハイスクールに通っていたが、放課後に彼が友人たちと遊んでいる様を高層アパートの窓から毎日観察している怪しげな老人ととあるきっかけでかかわりを持つようになり、見るからに異様な文学的素養と文章作成能力をそなえたこの老人がどうやら50年前に一冊だけ文学的傑作を書いて世間から姿を消した高名な作家ウィリアム・フォレスターであるらしいことがわかる。時を同じくして優秀な学力とスポーツの才能を認められた主人公は私立の有名校に編入することになり、初日からかわいい女の子と知り合い、バスケットボールではチームを勝利に導いてスターになり、書き物は老人の指導によってその高い才能が開花し文句のつけようがない高校生活を送っていたが、そのせいで文学的才能と人間的品位を欠いた悪辣な国語教師の反感を買うことになって主人公の生活にはふたたび元の暗い影が差し始める。王道だが退屈さを感じさせないよくできたドラマ。気難しい老作家を演じるショーン・コネリーが後半にただ自転車に乗って夜の通りを走るだけのシーンが印象に残った。

 

filmarks.com