2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『小説家を見つけたら』Finding Forrester(2000年)監督:ガス・ヴァン・サント

高い知能と恵まれた運動神経を有し、特に文学とバスケットボールの才能に秀でる16歳の少年ジャマール・ウォレスは、黒人の貧しい母子家庭の次男という境遇ゆえに兄と同じく才能を開花させることができないまま地域のハイスクールに通っていたが、放課後に彼…

マイケル・クック『1冊でわかる コーラン』(大川玲子訳、岩波書店、2005)

クルアーン(コーラン)はイスラム教の聖典である。預言者ムハンマドに啓示された神の言葉(アラビア語)からなり、七世紀に成立以降、多くは冊子本の形にまとめられ、礼拝の場では読誦され、教義の上ではさまざまな解釈の対象になってきた。 単なるクルアー…

ジョン・クラカワー『荒野へ』(佐宗鈴夫訳、集英社文庫)

1990年代の初頭、アメリカの裕福な家庭で育ち大学も優等で卒業し文学青年としてそれなりに文化資本を積み上げた24歳の青年がヒッピー的な放浪癖を拗らせてアラスカの荒野に入りそこで横死するまでを描いたノンフィクション作品である。ソローやトルストイの…

森博嗣『馬鹿と嘘の弓』(講談社文庫)

探偵事務所の所長小川令子と所員の加部谷恵美は不明の依頼人からとあるホームレスの青年を観察し日々の状態を報告する仕事を請け負うが、観察の過程で青年に接触した同じく住所不定の老人が急死し、その老人がなぜか小川たちが不明の依頼人から受け取ったも…

安岡章太郎『海辺の光景』(新潮文庫)

故郷高知の精神病院に入っていた母親が危篤との報を受けて東京から帰ってきた主人公は、一年振りに見た母親の衰弱ぶりにいまさらのように狼狽するが、息子としての義務感から病院内で寝泊まりしてその死を看取ろうと殊勝な態度を見せるものの、以前からひと…