アベル・ボナール『友情論』(大塚幸男訳、中公文庫)

私たちが友情と呼ぶほとんどの関係は、ただ慣習や同盟にすぎない。社会で生きていくなかで当然生じる人との付き合い(交際)は、惰性と打算と功利に満ちた利己的関係であって、ボナールに言わせるなら「真の友情」ではない。それは人の代わりに人の地位や機能を見ているからである。人を人として見、その品を品として評価することが友情の基礎となる。友情は獣たちの卑俗な野合ではない。友情とは貴族的関係である。

図書館でふと目に留まったので、最初の1節だけ読んでみた。そこで書かれていたのがおおむね上記の内容。なんとなくニーチェを思い出させるが、リアリストのニーチェが件の利害関係のほうに多く関心を向けていたのに対して、モラリストのボナールはそれを超えたところにあるしがらみなき友情のほうを見ているようである。いわゆる「友だち幻想」を批判した最初の本のようでもあるが、「真の友情」なるものを美化するばかりで現実的なアドバイスなどは見当たらない(もしかするとこの後に出てくるのかもしれない)。友達がいなくて悩んでいるタイプの人がこれを読んだらますます拗らせること間違いなし。ただし世間的なつながりを批判的に見る練習にはなる。